意識とは?一唯識思想と量子脳理論をめぐって
坐禅を続ける中で、「意識とは何か?」という問いに自然と関心を持つようになりました。そして、その答えを探す手がかりとして出会ったのが、3~4世紀頃の古代インドで生まれた大乗仏教の「唯識(ゆいしき)思想」です。
この思想では、人間の心は八つの「識(しき)」一一つまり意識の層一一で構成されており、最も深いところにあるのが「第八識=阿頼耶識(あらやしき)」です。これは、生と死を超えて連続する深層意識であり、その生命体の行いや記憶が“種子”として蓄えられ、未来の行動や思考、さらには来世の運命にも影響を及ぼすとされています。
一方、現代科学の世界でも、量子力学を通じて「意識の本質」に迫ろうとする動きがあります 。たとえば、2020年にノーベル物理学賞を受賞した英国のロジャー・ペンローズ博士は、「量子脳理論」という興味深い仮説を提唱しています。
この理論では、意識とは脳内の微小な構造(微小管)における量子的な現象によって生まれるとされており、心臓が止まるとその意識情報は脳から離れて拡散し、蘇生すれば戻ることがある。そして、戻らなければ意識情報はそのまま宇宙に在り続け、別の生命体とつながって生まれ変わることもあるかもしれないーーという、まさに仏教的な輪廻観を思わせる内容です。
当方は、量子力学についての知識は全くありませんが、ペンローズ博士の「意識情報」の考え方は、唯識思想の「阿頼耶識」と非常に似ているように感じています。いつの日か、科学のカによって「生と死の本質」が少しずつ明らかにされる時代が来ることを期待しています。
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