⾒えない世界への⼿探り

悪魔の証明

知人から初めてワクチン陰謀論を聞いたときは、少し驚きました。感覚としては、「私はUFOにさらわれたことがある」と言われたような戸惑いに近かったと思います。ただ、“UFOにさらわれた人がいない”ことを証明するのは「悪魔の証明」そのものなので、説得はできないと思っています。

一方で、世の中には「一部の人が陰謀論と主張していたが、結果的に事実だった」という例もあります。当方が高校生の頃、郷里の高岡市の雨晴海岸で若いカップルが拉致されそうになった事件があり、これは犬を散歩していた方の犬が大きく吠えたために、未遂に終わりました。その数年後、地元のホテルで投身自殺があり、遺留品から北朝鮮の工作員の可能性が報道されました。

当時、地元では“北朝鮮が人をさらっている”という噂が広がっていましたが、今消滅しそうになっている、とある政党は「韓国KCIAのでっちあげ」と主張し続けていました。

反対に、「さすがにこれは無理があるだろう」と思った陰謀論もあります。アメリカ同時多発テロ(9.11)が“アメリカ政府の自作自演だ”という主張です。

アメリカに赴任していたときの実感として、一般論としてアメリカの人は良くも悪くも“個”が強く、同調圧力のようなものはほとんどありません。あれほど大規模な作戦なら、関与した人全員が黙っていられるとは思えず、もし本当に自作自演ならとっくに内部リークが出ているはずだと感じていました。

また、根拠の一つとしてよく挙げられる「ビルの崩落の仕方がおかしい」という話も、建物の構造を前提にしていない誤解が多かったように思います。WTCのような超高層ビルは、鉄筋コンクリート造(RC造)では、自重が重すぎて不可能で、ごく単純化して言うと、鉄骨に厚いパネルを張った構造です。

現在の技術でも30階以上の建物全ての階のRC造は無理です(最近は低層階だけRC造で、上層階は鉄骨造の高層建築もあります)。ジェット燃料が燃えて高温になったら、旅客機が突っ込んだ階やそこに近接した階の鉄骨もパネルも溶けて、上の階の自重で一気に崩落する。これは当時の勤務先の地震研究部門が構造計算やシミュレーションをした結果とも一致していました。

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